2026.11.06

独自データとAIの計算力をかけ合わせて、短時間豪雨を捉える新技術「AIナウキャスト」の運用を開始

線状降水帯やゲリラ雷雨など、短時間の豪雨をもっと正確に予報して、ユーザーの安全を守りたい──その思いから、AIをどう活用できるのかに挑戦し、2026年10月に運用を開始したのが、数時間先までの雨量を高精度に予報する「AIナウキャスト」です。

今回のブログでは、なぜAIを活用して1km四方の高解像度予報を開発したのか、従来技術との違いや開発の裏話を、予報センターで開発を担当した藤野純平氏に聞きました。



 

「短時間豪雨から、ユーザーの安全を守りたい」自社の強みを活かしたAI気象予測モデルとは?

ウェザーニューズの予報現場では、日頃から予報精度の向上に取り組んでいます。

短時間で急激に発達する豪雨は、従来のナウキャスト※1では捉えきれないケースがありました。そこで、より正確に降水を予測するため、「AIを活用した短時間豪雨の予測」に挑戦することになりました。

※1ナウキャスト:「今まさに起きていること」から「数時間後の極めて近い未来」までをピンポイントで予測したもの。例)気象庁の発表する「降水ナウキャスト」「雷ナウキャスト」「竜巻ナウキャスト」など

世界に目を向けると、各国の気象機関やGoogle、NVIDIAなどもAI気象予測モデルを開発していますが、主流は、地球全体を対象に1〜2週間先を予報する全球モデルです。

一方、私たちが捉えたいのは、急速に発達するゲリラ雷雨や線状降水帯など、災害につながる数時間先の豪雨です。



ウェザーニューズには、独自の観測網とユーザーから届く天気報告「ウェザーリポート」があり、これらをもとに作成した高精度な実況解析データ1と、AIの計算力をかけ合わせれば、10分に1回という高頻度でモデルの再計算を繰り返し、局所的な豪雨を捉えることができます。

「自社データの強み」と「AIの計算力」、この2つを掛け合わせて生まれたのが「AIナウキャスト」です。他にはまねできない独自の価値を、社会に届けられると考えています。

1日20万通届くアプリユーザーからの天気報告「ウェザーリポート」
1日20万通届くアプリユーザーからの天気報告「ウェザーリポート」



 

千葉豪雨を捉えたAI気象予測、従来のナウキャストとの違い

従来のナウキャストは、直近の雨雲の動きを見て「この雲がこのスピードでこの方向に移動しているから、1時間後も同じ速度で同じ方向に流れるだろう」という外挿の考え方でロジックが組まれています。

しかし、今回開発した「AIナウキャスト」は、膨大な過去データを学習したAIが、雨雲の動きだけでなく、気温や風、気圧といった複数の要素を組み合わせて新たに発生する雲まで予測します。

この強みがはっきりと表れた事例が「令和8年8月千葉豪雨」でした。

気象庁の降水短時間予報では、発生した雨雲がそのまま北西へ流れていく予測になっていました。しかし「AIナウキャスト」は、「流れていった雨雲は次第に衰退し、南東側で新たに強い雨雲が発生するため、南東側でも雨が降り続く」という現象を予測し、実際に強い雨が降るエリアをより正確に表現することができたのです。

(上から順に)実況解析値/ウェザーニューズのAIナウキャスト/気象庁の降水短時間予報 を比較した図
(上から順に)実況解析値/ウェザーニューズのAIナウキャスト/気象庁の降水短時間予報 を比較した図



 

豪雨を見逃さない実用的な予測への挑戦

技術的には、AIを活用して高頻度で更新される高解像度な予報を作ること自体は、それほど難しくありませんでした。しかし、当たらない予報では意味がありませんし、かえってユーザーの信頼を失います。開発の過程で最も苦労したのは、「当たる」予報に仕上げることでした。

開発初期のモデルは、「ハズレ」を減らそうと広い範囲で雨を弱く降らせるような特徴を持っていました。そこで、経験豊富なスタッフのアドバイスも受けながら、ウェザーニューズのノウハウを組み込んだ独自のチューニングを施し、「局所的な雨の強弱を表現できる、メリハリのある予測」になるよう調整しました。

AIにすべてを丸投げするのではなく、最後は人間の気象知見やチューニング技術を掛け合わせる。ここは気象のプロとしての腕の見せどころであり、社会実装させるAI技術として非常に重要な作業だと考えています。

ウェザーニューズ 予報センター 開発担当 藤野純平氏
ウェザーニューズ 予報センター 開発担当 藤野純平氏



 

先端技術を取り入れる柔軟性とスピードが鍵、AI予測の運用を実現した企業文化とは

「AIナウキャスト」の社会実装を可能にしたのは、ウェザーニューズの2つの企業文化だと思っています。

1つは、世界中の優れた技術に目を向け、自社独自の気象データと掛け合わせる「柔軟性とスピード」。もう1つは、現場のエンジニアの危機感や想いから始まった価値ある挑戦を会社が後押しする風土。

先端技術を使いこなし、圧倒的な実用性を生み出すスタンスこそ、ウェザーニューズの真骨頂だと考えています。

「AIナウキャスト」は、ウェザーニュースアプリの降水量予測として反映されています
「AIナウキャスト」は、ウェザーニュースアプリの降水量予測として反映されています

現在このデータは、利用者数No.12の天気アプリ「ウェザーニュース」へ実装されています。

ゲリラ雷雨や線状降水帯の危険をいち早く察知して命を守る防災情報としてはもちろん、「傘を持っていくべきか」といった日々の判断でも頼れる予報にしていきたいですね。

また、このモデルに満足せず、技術の発展や社会的なニーズに合わせてモデル自体をどんどん進化させ続けたいと考えています。直近の目標として、気象衛星の観測データなどをモデルに入力することで、高精度のまま「12時間先」まで予測できるようにアップデートし、ユーザーが避難や備えのための時間(リードタイム)を、さらに長く確保できるような予報を目指します。

これからも最新技術を活用し、ユーザーの命を守る新たな気象予測技術の開発に挑み続けます。

Footnotes

  1. 1:独自の解析雨量についてはこちらのブログで紹介しています:https://jp.weathernews.com/blog/article-2025092901/ ↩︎
  2. 2:【感謝と決意】ウェザーニュース、お天気アプリ利用者数No.1達成!「いちばん使われる」ための挑戦と工夫 ↩︎